2020年東京オリンピック競技大会を見据えて

世界で活躍するアスリートの育成に向けたスポーツ医・科学的サポートの可能性

人生の目標、スポーツの目標を明確にし、 そのためのプロセスも具体化する。 〜『目標設定』は人生のイメージトレーニング〜

2016/10/27

高妻 容一

目標達成までのプロセスを日々の練習にまで落とし込む。

大きな目標を達成するための中間目標を課す。

目標がはっきりしたところで次に記入してもらうのが「目標設定用紙(プロセス目標)」だ。
今度は目標を達成するための具体的なプロセスを考えてもらう。

「ジュニアの選手にはよくこう聞くんです。新婚旅行に行くとしたらどこがいい? フロリダのディズニーワールド。いいね。じゃあ、どうやって行く? 飛行機は? 空港は? 乗り換えは? ちゃんと調べて計画を立てないと出発もできないね。夢や目標を達成するのも同じなんです。いきなりオリンピックの舞台に立てるわけじゃない。例えば柔道であれば、インターハイで優勝する。強い大学に入って全国大会で優勝する。ユニバーシアードの日本代表になり、外国人選手に勝って優勝する。全日本選抜柔道体重別選手権で優勝する。さらにオリンピック開催年の欧州各国の大会で優勝する。そこまでやってからオリンピック選考があるわけです。競技によって道程は異なりますが、目標に到達するためには、綿密な計画を立てて準備をしなければなりません。プロセス目標はそのための準備です」

目標を持つことは大切だが、そこで終わってしまっては行動に結びつかない。見てわかるように目標設定用紙のすべての空欄を埋めようとすると、否応なしに将来に目を向け、自分自身と向き合わなくてはならない。
記入はかなり面倒で時間のかかる選手も珍しくない。しかし、だからこそ意味がある。現在、バレーボールやバスケットボールのプロリーグで活躍する選手からも、この「目標設定」を学生時代に行ったことが現在につながっているとの評価を得ている。

誰にも平等に与えられた24時間の質を高める。

これだけでは終わらない。
目標達成までのプロセスをもっと身近な課題とするべく、「今年1年間の上達プラン」、さらには「今週のスケジュール」にまで、行動を具体化していく。

「まず1年のうちにどんな試合がいつどこで行われるのかを書いてくださいというと、ほとんどの選手は書けません。監督やマネジャーに聞かなきゃわからないと言う。そこで私は指摘します。だったら君はかなりいい加減な選手だね。いつ試合があるかもわからないのに、どうやってコンディションやメンタルをピークに持っていくの? やばいね! 選手たちは言葉に詰まりますが、そこで焦りや危機感を持ってもらうことが大切です」

1年間のプランは、試合のスケジュールに合わせて、チームと個人それぞれの練習計画を立てるためのものだ。チームとしてどう取り組んでいくのか。どうやってピークに持っていくのか。それが頭に入っていれば、自ずと日々のやるべきことも鮮明になってくる。
それを“見える化”するのが「今週のスケジュール」だ。いま自分がどのように毎日を過ごしているかを振り返って記入し、果たしてこれで夢や目標を達成できるかを自己分析してもらう。そのうえで、プラスアルファで何と何を加えたら、もっとうまく、強く、速く、上達するかを再記入してもらう。

「どんな選手も1日は24時間。平等です。その限られた時間の使い方が将来の自分を化けさせるわけですから、24時間をもっと質の高いものにしなければなりません。歯を磨きながらスクワットをする。電車の中ではバランス・トレーニングをする。1つ前の駅で降りてランニングして帰る。宿題はストレッチをやりながらする。携帯やゲームで時間を浪費しない。やろうと思えばできることはたくさんある。そこに目を向けてほしいんです」

ここまで細かく目標設定をするのは、すべて“気付き”のため。気付けば何かをしたくなる。しないではいられなくなる。そういう内発的なモチベーションが高まれば、時間の使い方を自ら工夫するようになるだろう。