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万全のコンディションで試合に臨むためには いつ、何を、どう食べるべきか。 〜試合期の実践スポーツ栄養学〜

2016/12/27 NEW

岸 昌代 岸 昌代

試合前はエネルギー源となる糖質補給がポイント。

栄養だけでなく衛生・安全にも配慮。

試合まで1週間という試合前調整期に入ると何に気をつければいいのだろう。やはり食べ慣れた普段の食事が基本であるのは変わらない。練習量に合わせてエネルギー量を調整するのも同様だ。さらに、衛生面の配慮も大切になるという。

「ハードなトレーニングでカラダの抵抗力が低下していることがあるので、食事の前には石けんでしっかり手を洗い、移動時にはマスクを着用するのもいいでしょう。生もの(刺し身、カキ、寿司、生卵)は避けて安全な食品を選びます。海外遠征の場合は国にもよりますが、生野菜やカットフルーツ、水道水を取らないように気をつけてください」

下痢や便秘などのトラブルも予防したい。

「下痢をしやすい人は、ごはんなどの主食中心の食事を心掛け、水分補給は牛乳やオレンジジュースよりも、水やお茶、スポーツ飲料が適しています。ミカンなどの柑橘類には下痢を助長する作用があるので避けた方がいいでしょう。便秘になりやすい人は、定刻にトイレに行くことが大切です。そのうえで水分補給をこまめにしてください。便秘の場合は逆に柑橘類やジュースがオススメです(個人差があります)。お腹にガスがたまらないよう、食物繊維が多いもの(玄米、豆類、いも類、バナナなど)を控えめにします」

そして、試合の2日前〜前日になると、主食多めの食事(糖質中心の食事)がいいという。

「揚げ物など脂肪の多い料理は控え、筋肉のエネルギー源となる筋グリコーゲンを蓄えるために、ごはんやパン、めんなどの主食を多めにするといいでしょう。持久系の選手の場合には、1週間前くらいから調整する方法(グリコーゲン・ローディング法)もあるので指導者の方に相談してください」

試合当日はスケジュールに合わせて糖質や水分を補給。

いよいよ試合の当日になると、競技にかかわらず、開始時刻や競技時間に合わせたタイミングで食事や補食を取ることがポイントになる。

「試合が午前か午後かで食事の取り方も変わりますが、基本的には試合が始まる3時間前までに基本形の食事をとるようにし、試合が近づくにつれて、おにぎりやパンなど糖質の多い固形物の補食から水分補給へとシフトしていきます。試合に近づくほど固形物より水分の比率を高めていくようなイメージです」

トーナメント形式などで試合が続く場合は、インターバルに合わせて補食をとることをすすめている。

「試合後に補食で素早く糖質を補給することで筋グリコーゲンを回復させ、水分補給で脱水を予防することで次の試合にいい状態で臨めます。インターバルの時間がどれだけあるかによって補給するものも変わってきます。時間が短い場合には水分補給を中心に。時間が長い場合には糖質の補給を考えましょう。糖質をとる場合には目安があります。体重1kgあたり糖質1〜1.2gですから、体重60kgの人であればおよそ60gと覚えておけばいいでしょう(表1参照)」

ただし、緊張状態で無理をして取る必要はなく、食べやすいゼリー飲料(いろいろなタイプがあるが糖質がとれるもの)を利用してもいいそうだ。

試合後の食事についても聞いた。

「試合後のカラダはエネルギーをはじめ、ビタミン、ミネラルなど多くの栄養素が消費された状態ですから、それらの栄養素を補給して元のレベルに回復させることがポイントになります。なるべく早く主食中心の食事をしっかり取っていただきたいのですが、2時間以上時間が空く場合は、補食で糖質やたんぱく質を補給しておくようにしてください」

岸氏ら公認スポーツ栄養士は、指導者と連携して選手をサポートしていきたいと考えている。ぜひ要望を寄せていただきたいとのことだ。