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気持ちはトレーニングで コントロール可能になる。 〜『理想的な心理状態(ゾーン)』をつくりだす〜

2017/09/11

高妻容一 高妻容一

そしてサイキングアップで気分を高める。

好き、楽しい、おもしろいと感じることが大事。

野球は好き? サッカーは好き? バスケットボールは好き? 選手は迷うことなく「ハイ」と手をあげる。しかし、練習は好き?と聞くと、そーっと手をあげたり、目を伏せたりしてしまう。高妻氏はそんなチームをたくさん目にしてきたという。

「練習がおもしろくないのは、やらされている気分を感じたり、やらなくてはいけない気持ちが前面に出ているからです。これではいい練習ができるはずがありません。人は好きなことをやっているとき、楽しいとき、おもしろいと感じたときに素晴らしい集中力を発揮します。サイキングアップで素晴らしい気持ちののりをつくれば、毎日の練習が楽しいと選手たちは感じるようになるでしょう」

誰にでも、やる気が起こらないとき、気分がのらないときはあるものだ。しかし、練習や試合は否応なくやってくる。何もしなければ良い結果は残せない。気持ちをコントロールして、やる気を高めたり、気分をのせていくことができれば、練習の質が高まって上達が早くなり、チームの一体感が高まる。試合ではベストなプレーができるようになる。技術や体力のトレーニングをする前には必ずアップ(ストレッチ、ウォーミングアップ)をするだろう。心のアップをしない方が不自然なのだ。
身体を使って気持ちをリラックスさせることができるように、身体を使ってやる気を高め、気持ちをのせることもできる。それがサイキングアップという心理的スキルなのだ。
ただし、前述したようにサイキングアップはリラクセーションとセット。サイキングアップだけを見よう見まねで取り入れても、その意味がわからないままやったのでは効果は出ない。

ふざける時間を意図してつくる。

円陣を組んで手を重ね「オー!」と叫ぶ。これもサイキングアップの一種だが、ここでは基本となる標準的なサイキングアップの手順を紹介する。

1)軽快な音楽を使って気持ちをのせ、音楽に合わせて体を動かす。
2)音楽に合わせて手を叩き、呼吸をリズムに合わせ、呼吸を早く強くする。
3)エアロビクスダンスのように音楽に合わせてジャンプし、前後、左右、腰を振る動作をして、呼吸や心拍数を高める。
(ここからはペアを組んで)
4)シャドーボクシングを楽しく10秒。
5)フットワークよく肩タッチゲームを10秒。
6)手首をくっつけてリラックスした状態から相手の肩をタッチするゲームを10秒。
7)プッシュゲーム(気をつけの姿勢から両手を合わせプッシュする立ち相撲)を10秒。
8)あっち向いてホイを10秒。
9)握手をしてジャンケンし、勝った方は相手の手を叩く、負けた方は叩かれないように手でカバーするゲームを10秒。
10)最後は、チーム全員で手を叩き、「ほい、ほい、ほい、ほい・・・・・」と声を出し、最後はハイタッチで気持ちをのせていく。

やってみるとわかるが、ゲームの要素が強いので、単純に楽しく、おもしろい。軽快な音楽をBGMにすると自然に身体も動き出す。だから、サイキングアップを見て「こんなのふざけている」と批判する人もいるそうだ。

「その通り、ふざけているんです(笑)。日本ではふざけてはいけない、笑ってはいけないと言う人がいますが、笑ってプレーしようというのは今や世界の常識。我々は気持ちを盛りあげるために、意図してふざける時間をつくっているのです」

このようなプログラムを行いながら、自分はどんなことをすれば気持ちが切り替えられるのかを知ることが重要だ。日々のトレーニングでリラクセーションとサイキングアップの心理的スキルをにつけれは、試合に活用して最高のパフォーマンスを発揮できるだろう。