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コーチが変われば環境が変わり 環境が変われば選手が変わる。 〜指導者のあるべき姿とは〜

2017/02/13 NEW

伊藤 雅充

選手に努力を求めるなら、
コーチも努力して最前線のコーチング学を学ぶべき。

選手は変えられない。コーチ自身が変わればいい。

コーチを対象にしたセミナーで指導上の課題についてアンケートをとると、「選手がやる気にならない」「モチベーションが上がらない」と答えるコーチが多い。問題のベクトルが選手にのみ向けられており、コーチである自分に向けている人の数はそれほど多くないのだ。

「実は選手がそうなっているのは、コーチがそうだからではないですか。選手に努力を求めるなら、コーチも努力して最前線のコーチング学を学ぶべきだと思います」

選手を変えようとする、その考え方そのものを転換することで全てが変わると伊藤氏は言う。

「選手が思うようにならないと悩む人が多いのですが、そもそも選手をうまくコントロールしようとしても、自分の分身ではないのですから操ることなどできません。他人は変えられないのです。では何を変えるか。単純です。自分が変わればいいのです。頑張れという前に自分が頑張る。勉強しろという前に自分が勉強する。コーチが変われば環境が変わり、環境が変われば選手たちもそれに適応して変わっていくのです」

コーチングとは結局、誰かを変えるテクニックやスキルではなくて、実はコーチ自身がどういう人間になりたいのかを考える学問なのだ。コーチが変われば選手も変わる。そこに気付けばコーチの心の持ちようも大きく変わる。

「他者からの評価ではなく、コーチとしての自分の能力を伸ばすことに目標が置けるようになります。自分の中に置いた目標なので、後は自分が努力すればいいので精神的にも楽になります。それに、わからないと言えるようにもなります。普段偉そうにしているとなかなか言えませんよね。でも、わからないから調べておく。君はどう思う。なるほどそんな感覚なかったよ。教えてよ。そう言ってあげる方がお互いの学びのためになるのです。わからないことはわからないで仕方ない。わからないからダメなのではなく、わからないと言えずに進歩しないことの方がよほどダメなのですから」

コーチが変われば選手が変わる。コーチが変われば社会が変わる。

伊藤氏は現場で奮闘するコーチたちにエールを送る。

「スポーツで人は不幸になってはいけない。これは私の信念です。ハッピースポーツですね!スポーツは何のためにやるのか。もちろん楽しいからであり、ハッピーな人生を送るためです。わざわざ不幸せになろうと思ってスポーツをする人はいません。しかし残念なことにスポーツから離れていく人が現実には多くいます。ジュニア時代、国際レベルの選手だったのに、その後、競技を離れた選手を追跡調査すると、その原因はほぼコーチにありました。子どもたちのために、選手たちのためにと思っていたはずのコーチが、いつの間にか真逆のことをやっている。コーチもアスリートの一人です。アスリートであれば当然、自分を向上するというところ、優れたコーチングとは何かというところに興味を持ってスポーツを運営してもらいたいと思います」

そして、コーチングには努力に見合う大きな魅力とやりがいがあると声を大にする。

「私はコーチングにとても大きな可能性を感じています。コーチが変われば選手が変わると言いましたが、それは次世代を担う人材を育成するということでもあり、私はそこに学校教育とは違うスポーツ・コーチングの魅力を感じています。コーチが変われば、社会が変わる。決して大げさではなく、私はそう信じています」

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